Residing outside Japan?
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聖女として召喚された主人公、結城美里(ユウキミサト)
聖女として信頼され絆され異世界の平和のために頑張るも、聖女扱いは肩がこる
そして何より、チヤホヤしてくれるけど手を出さないイケメン達に悶々

聖女を「襲わない」契約をしたインキュバス
女殺しの異名を持つも聖女相手だと自制していた傭兵
少し子供っぽいけれど、とても素直で良いつけを聞く獣人

思い切って会話中でさり気なく元の世界では恋愛経験ある一般人であることをアピールした途端みんな目の色が変わって…

上記内容の冒頭部分を書かせていただきました。
好きシチュだったので、とても楽しかったです。
実績公開用に一部抜粋しています。
R18部分含む全文公開はこちら:https://syosetu.org/novel/309736/1.html

◇◆◇

「ユウキ。そろそろ着くけど、気分はどうだ?」
 うつらうつらとしていた意識が、耳心地の良い穏やかな声で呼び起こされる。そのまま甘えてしまいたくなる、無条件に安心感を与える低い声は馴染みのあるものだ。馬車の振動に誘われて、いつの間にかうとうとしていたらしい。
「すみません。大丈夫です」
「……ミサ、本当?」
 心配そうに覗き込むナギの青い瞳に、どきりとした。タンザナイトみたいな鮮やかで美しい色合いにじっと見つめられると、なんだか心の中まで全て見透かされてしまいそうでさりげなくそっと目をそらした。
「本当に大丈夫。少し、眠かっただけですよ」
 ふわりと、潮の香りが鼻腔を擽る。どこか懐かしいような香りに、こちらの世界でも海はやっぱりしょっぱいんだろうな、と思った。
 やがて、目的地に着いた馬車が緩やかに動きを止める。
 馬車の扉を開き、私に向かって美しい男が手を差し伸べた。端正なだけではなく、どこか危うい雰囲気を纏っている人は、金の瞳を煌めかせている。
「おいで、ミサト」
「一人で降りれるんだけど……」
「僕、御者してたんだよ。ミサトと離れて頑張ってたんだからご褒美くれてもいいっしょ?」
 私の手を取って、無邪気に笑うからつられて笑ってしまった。
「私をエスコートすることって、ご褒美になるかな?」
「なるよ! 僕にとってはね」
「リュシアン、ずるい……ナギだって、さっきまで走らせてたっ」
 そういえば最初に隣に座っていたのはリュシアンで、ナギは前の席に座していた。ここに来るまで、持ち回りで御者をこなしていたのだろう。ちらりとジェイクを見ると、困った奴らだとでも言いたげな表情を浮かべて、けれど何も口にしなかった。
 恭しく手を取られて馬車を降りて、目の前の光景に息を飲む。
「綺麗……」
 凪いだ海と澄んだ空の境がくっきりと映しだされている。
 澄み切った青が徐々に赤みを帯びて、黄昏時の柔らかな光へとその色を変えていた。海の色が橙に光る中、時折波間が揺れてきらきらと銀が走るのは魚の群れがいるからだろうか。 
 オーシャンビューで有名なホテルに泊まったことはあるし、海が綺麗だと言われている海岸を歩いたこともあるけれど、これだけ透明度の高い海を見るのは初めてだ。
「ユウキ、すまないが少し歩いてもらう」
「ここからはあまり道がよくないから、馬車だとちょっとね」
 申し訳なさそうなアルベルトの言葉に、リュシアンが重ねる。
 リュシアンが取った手と別の手を、ナギにぎゅっと握られた。
「疲れたら、言って。ナギがミサを運ぶ」
 拗ねた声が少し愛おしい。ふたりと手を繋ぐような形で、先に立つジェイクの後ろをついて歩いた。
 五分ほど歩いただろうか。少し気後れしそうなくらい豪奢な建物が現れる。近付くにつれ、漏れてくる音楽や騒ぐ人の声が耳に届いた。思った以上に明るく楽しそうな雰囲気にわくわくする。
「正直、聖女様にはどうかと思うが、俺達が普段行くような店に行ってみたいってご所望だったからな」
「……ダメでした?」
「いや、そんなことはない。庶民の生活を知っておきたいんだろう? 素晴らしい心がけだと思う」
 アルベルトからしてみると嫌味でも何でもないセリフだろうけど、私にとっては重くのしかかる言葉だ。
 聖女様……そう呼ばれるようになったのは、ここ一年程のことだ。その前の私は、単なる一般庶民でしかない。大仰な呼び方は性に合わなかった。
 自室で眠っていたはずなのに突然見知らぬ場所で目覚め、あなたこそが聖女と祭り上げられた日を思い出す。よくよく話を聞けば、あなたは聖女なのだと告げられた。異世界から聖女を召喚することに成功したと言うのだ。何を馬鹿なと一蹴したいのは山々だけれど、目にした景色や多彩な人種、科学と相反する魔術を示されて、納得するしかなかった。