pixivで公開中のフリー台本
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おかえり、愛しの旦那さま。

おや、どうしてそんな不思議そうな顔をしているの?

変な君、でもそんな顔も僕は好きだよ。

玄関に立ってないで早く入っておいで。……うん、やっぱり、傘持ってなかったんだ。

君のことだから、折りたたみ傘なんて持ってないって知ってたよ。

本当は一緒に帰りたかったのだけど、部活中の君を待って、練習の邪魔しちゃ悪いと思ったんだ。

ああ、でも。そんなに濡れてしまうんなら、やっぱり迎えに行った方が良かった。ごめんね、僕の気が効かなくて。

代わりと言ったらなんだけど、部屋は暖めておいたよ。君が駆け込んでくると思ったから、バスタオルだって用意してる。

だから。玄関口で立っていないで、早く靴を脱ぎなよ。靴底まで水浸しだろう?  せっかくおろしたての靴なのに残念だね。

真夜中に、通販サイトにかじりついて、せっかく勝ち取った靴なのに……。

そんなに青い顔しないで。泥にまみれた靴の洗い方は勉強してきたよ。すぐに元通りにしてあげるから。

ん? ……どうして僕がここにいるかって? そんなの未来の君のお嫁さんなんだから当たり前だろう。

ああ、違うか。

君がそんな当たり前のこと聞くわけがなかったよね。

夫の気持ちが察せないのは、妻として失格だ。君が聞いてきたのは手段のほうだったんだよね。

大丈夫、君はちゃんと戸締りをしていたよ。僕はお母様からもらった合鍵で入っただけ。

お母様は一人暮らしの君を心配していてね、面倒を見るように頼まれたんだ。今さら頼まなくたって、最初からそうするつもりだったんだけどね。

でも、未来の義母にお願いされたんなら、張り切らずにはいられない。可愛いところがあるのだと笑ってくれ。

本当は何から何まで、僕が面倒見てあげたいんだが、まだ、その時じゃないんだ。

すまないね、卒業したら籍を入れよう。そしたら、おはようからおやすみまで、全部僕がやってあげる。

相思相愛なんだ、負担だなんて思ったことがないよ。

ほら、このタオルだって、ほんのり温かいだろう。

もう君が帰宅するって分かっていたから準備したんだ。よくできた妻だろう?

ほら、ぎゅう。可哀想に、そんなに震えて。僕が温めてあげよう。

もちろん、タオルなんかじゃなくて、この肌で直接、でも構わないんだよ。

そんなに照れないでくれ。何も、突き放さなくていいだろう。

僕は君が望むなら、全てを差し出す覚悟はもう出来ているんだ。

ほら、リュックを。濡れたままの制服じゃ、風邪を引いてしまう。

動かないで。

……ボタンが外せないだろう。一つ二つつ……三つ……。

くすぐったくしてごめんね。でも君が身じろぎするからだよ。

僕を焦らしているつもり?

だとしたら君は、上手だ。そそられてしまうよ、君のその肉体とじれったさにね。

僕だって若い乙女だ、男の体に欲を感じて当然だろう?

そんな驚いた顔しないでくれ。

ほら、胸の鼓動、わかるだろう。……もっと掴んで、柔らかい肉の奥で、心臓は高鳴っているんだ。

ねぇ、僕がこんな風になるのは君だけだよ。

出迎えるのもを脱がせるのも、触れ合うのも君だけ。

だから君も、他の女と目なんて会わせないでくれ。

浮気はいけない。

君の未来の妻は、誰より、嫉妬深いんだ。

今、ネクタイをほどいてるこの手で、君の首を絞めさせないでおくれ。

ふふ、……これは冗談じゃないよ。

僕はいつだって本気だ。

いつだって本気で、君に恋してる。君を、殺せるほど愛してる。

……僕の愛が、君の骨の髄まで届くことを願っているよ。

ほら脱げた。ズボンを脱がせるのは、将来の楽しみに取っておくよ。

だから、甲斐甲斐しい恋人にご褒美をくれるかい?

なあに、命まではまだいらないよ。

君を見取るのは僕の役目だが、今はそんな寂しいことよりも、もっと熱いことをしよう。

……バスタブ、湯を溜めてあるんだ。

ああ、ごめんごめん、別のことを期待したよね。でもそれはまだ、お預け。

僕は軽い女ではないんだ。

え、知ってるって?

それは僕の愛が伝わっているようで何よりだ。

さあ、お風呂に入ろう。

恥ずかしいけれど、バスタオルを巻いていればいいだろう?

……脱がさないでくれよ、大好きな君。